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いたって明解な殺人 [ミステリ小説]

アトランタ、ピーチツリー・バトル・ロード。一泊旅行から自宅に戻ったアダムは、妻の遺体と、その傍らで独り言をつぶやき続ける息子を発見。弁護士の兄モンティに電話をかける。

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ひとり息子アンドリューには重度の知的障害があり、過去にも母親に暴力を振るっていたことから、事件は簡単に解決するかに見えたが・・。

グラント・ジャーキンスのデビュー作。途中、ジム・トンプスン(「おれの中の殺し屋」など)を思い浮かべたくらい、良い人が登場しません。だから、トーンはとことん暗い。でも、なぜかやめられません。一気読みです。

一見シンプルそうでいて、一筋縄では行かないストーリー展開に翻弄されます。現在の事件の謎解きに止まらず、アランとモンティ兄弟、そして、検事たちの過去の経緯も絡んで読み応え充分。また、最後の最後まで、どんでん返しが待ち受けています。

心理サスペンス、リーガル・サスペンス、法廷ミステリーと、一冊で三度美味しい本作は、映画化も決定しているそうです。たとえ肩入れできる登場人物がいなくても、このラストには大満足。★4
(画像は、高級住宅地ピーチツリー・バトル・ロード)

いたって明解な殺人 (新潮文庫)

いたって明解な殺人 (新潮文庫)

  • 作者: グラント ジャーキンス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/03
  • メディア: 文庫



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死刑囚 [ミステリ小説]

フィンランドのトゥルクからストックホルムへ向かう客船内で、暴行事件が起きる。ストックホルム市警のグレーンス警部は、船から消えた容疑者を逮捕するが・・。

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自宅へ戻っていたところを、あっけなく捕まった容疑者ジョン・シュワルツ。挙動が不審な彼のパスポートには偽造された形跡があり、更に調べを進めると、ジョンはすでに死亡したはずの、アメリカ人死刑囚だったことが判明します。

ジャーナリストと元受刑者コンビ共著の、エーヴェルト・グレーンス・シリーズ第3弾。内容や描写がリアル過ぎ、読み終えた後は必ず落ち込むと分っていながら、つい手にしてしまうのは、主要登場人物たちの強烈な個性ゆえ。

特に、60年代女性歌手のテープを仕事場でも大音量で流し、尊敬に値しない人物と思えば上司といえど噛み付きまくる、そんなわが道を行くグレーンス警部には惹かれます。

毎回、衝撃的な事件の中にスウェーデンが抱える問題を織り込み、問いかけてきますが、今回は死刑制度。その是非云々ではなく、自分のような無関心層も思わず考えさせる筋立てが見事。★3.5
(画像は、ジョンがロシアへ移送されたブロンマ空港)

死刑囚 (RHブックス・プラス)

死刑囚 (RHブックス・プラス)

  • 作者: アンデシュ ルースルンド
  • 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
  • 発売日: 2011/01/08
  • メディア: 文庫



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ラスト・チャイルド [ミステリ小説]

13歳のジョニーは、この1年間、誘拐されて行方の知れない双子の妹アリッサを探し続けている。ある日、偶然遭遇した殺人事件の被害者から、「あの子を見つけた」と告げられるが・・。

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「あの子」がアリッサだと信じ、ますます独自の捜索にのめり込んで行くジョニー。しかし、町では最近、別な少女誘拐事件が起きていて、大人たちは、今現在行方不明の女の子を指すと考え、誰もジョニーの話に取りあいません。

なぜ13歳の少年が、ひとりで事件を追っているのか。その理由が徐々に明らかになるにつれ、相反する感情の間を行ったり来たりすることになります。ジョニーに同調する自分と、認めがたい自分との狭間で。どちらにしても切ないです。

とにかく、本作全編が切ない。アリッサの事件が呼び寄せたさまざまな出来事と、それに翻弄され、今も苦しみ続ける人々の描写は、ミステリー小説の枠を超えて、読者の心に訴えかけてきます。

とは言え、推理小説としても素晴らしく、謎の糸口を見つけたかと思うと、そこには次なる謎が待っていて、本を置くことが出来なくなります。また、読者の意表を突く展開も見事。思いがけず、読後感も爽やか。お薦めです。★4.5
(画像は、ジョニーがアリッサを探し続けたノース・カロライナ州の山林)

ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ジョン・ハート
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/04/30
  • メディア: 文庫



ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ジョン・ハート
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/04/30
  • メディア: 文庫



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催眠 [ミステリ小説]

冬のストックホルムで、両親と子どもふたりの一家惨殺事件が起きる。ヨーナ・リンナ警部は、独立して家を出ている長女の安全確保のため、重症を負いながらもひとり生き残った、15歳の長男から事情を聞こうとする。

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長男の意識は混濁し、事情聴取に耐えられる状態にありません。しかし、犯行の残虐さから長女の身にも危険が迫っていると判断したヨーナは、催眠療法の第一人者バルク医師に協力を仰ぎますが・・。

更なる惨劇を防ぐため、封印を解き催眠術を使ったバルク。そんな彼の身辺で起きる始める奇妙な出来事。現在と過去の事件が絡み合い、新たな恐ろしい事態を招いていく展開から、一瞬も目が離せなくなります。

筋立ての面白さだけでなく、人物造形の妙、場面場面の映像が浮かんでくるかのような筆力、事件の背景にあるスウェーデンが抱える問題も垣間見え、興味が尽きません。また、家族の絆が証明されるラストは感動的です。

でも何より、ニューヒーローの登場を予感させる、スウェーデン国家警察ヨーナ・リンナ警部が魅力的。本作では出番が少ないものの、存在感は大。シリーズ第二弾が、今から楽しみ!(画像は、著者のアンドリル夫妻)


催眠〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

催眠〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ラーシュ ケプレル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/07/30
  • メディア: 新書



催眠〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

催眠〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ラーシュ ケプレル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/07/30
  • メディア: 新書



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氷姫 [ミステリ小説]

スウェーデン西部の小さな港町フィエルバッカ。両親の突然の死で帰省中のエリカは、偶然、凍えるような浴室で、幼なじみアレクサの遺体を発見する。最初は自殺と思われた彼女の死が、23年前に封印された過去を暴いていく。

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スウェーデンの女流作家カミラ・レックバリの処女作。彼女の生まれ故郷を舞台に、ひとりの美しい女性の死を巡る謎が、徐々に解き明かされていきます。

幸福の絶頂にあったアレクサが、なぜ殺されなければならなかったのか。そして誰が・・という謎解きのスリルは継続しますが、それよりも、主人公エリカやパトリックを始めとする、全ての登場人物たちが実にリアルに描かれていて、魅力的です。

大都会ストックホルムとは異なり、良くも悪くも古い暮らしが続いている町。夫婦、姉妹、親子、職場での人間関係など、日本だろうがスウェーデンだろうが変わらないんだという思いが、更に物語を身近に感じさせ、ページを繰る手が止まらなくなります。

エリカとパトリックの事件簿は、すでに6冊目まで刊行されているようです。本作でも、事件は一応の解決をみますが、登場人物たちの人生に、今後待ち受けている幾多の出来事や困難が気になるところ。次回、次々回作が楽しみです。欲を言えば、もう少し翻訳がスムーズだとよかったかも。

氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

  • 作者: カミラ レックバリ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/08
  • メディア: 文庫



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メアリー・ケイト [ミステリ小説]

フィラデルフィア国際空港。そのバーで隣に座ったブロンドの美女から、「毒を盛ったから、10時間以内に死ぬ」と告げられたジャック。最初は取り合わなかったが、女の言うとおりの症状が出始め・・。

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なぜジャックは毒を飲まされる羽目になったのか。ブロンド美女ケリー・ホワイトの目的は。第一、彼女は何者なのか。ジャックは、そしてケリーはどうなるのか。メアリー・ケイトとは?と、冒頭から謎がてんこ盛り。先行き完全不透明。

金髪女だけでも充分にクレイジーなのに、そこに、復讐に燃える国土安全保障省の工作員、コワルスキーが絡んできて、もう混乱に継ぐ混乱。こちらの頭も爆発しそうになります。

本書が初邦訳となるドゥエイン・スウィアジンスキーのスタイルは、意表を突くアイディア、息もつかせぬ展開、個性豊かな登場人物、アクションありお色気あり何でもありの、驚きとブラックユーモアに満ち満ちた娯楽小説のようで、今後が楽しみ。

間をおかず購入した最新作(というか2冊目)「解雇手当」でも、やってくれてます。(画像は、ジャックがケリーと出会ったフィラデルフィア国際空港。筆者もフィラデルフィア在住)

メアリー‐ケイト (ハヤカワ・ミステリ文庫)

メアリー‐ケイト (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ドゥエイン スウィアジンスキー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 文庫



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告白 [ミステリ小説]

10年前、カリフォルニア州マリン郡の司法心理学者として働いていたジェイク・ダンサー(わたし)は、当時経験した、ある事件を回想する。

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ジム・トンプスンの「おれの中の殺し屋」を彷彿とさせる、主人公が一人称で語りかける本作は、ノワール小説でありながら、最後まで謎解きの興味が途切れない良質のミステリーでもあります。

これから「告白」を手に取る方のために口を閉じておきますが、中盤までは比較的小さな、事件が起きた後は、まるで大波に揉まれているような、全編にわたり心理的な揺れを感じさせる作品。読後感も独特です。

”わたし”は何者なのか。犯人なのか、無実なのか。一筋縄ではいかない展開に、ただ身を任せるもよし。多弁な”わたし”の告白から、真相を探り出すのも、また一興かもしれません。(画像は、わたしがよくタマルパス山の頂から眺めたマリン郡)
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死神を葬れ [ミステリ小説]

マンハッタン・カトリック総合病院のインターン、ピーター・ブラウンの一日は、昨日までと同様、悪夢のような病棟勤務に明け、暮れるはずだった。しかし、ある患者の出現で、悪夢が地獄に変わろうとしていた。

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インターンの過酷な勤務実態。看護士不足、知名度に実力が全く伴っていない著名医師など、絶対に知りたくない病院の現状や内情。原因不明のホラー的症状で苦しむ患者たち。手のかかる彼らを、興奮剤で眠気を押しやりながら診続ける主人公・・という、メディカル・サスペンスの部分だけでも充分魅力的だし、エキサイティングです。

しかし、本作のすごさは、ピーター・ブラウンの過去にあります。今の彼がなぜあるのか・・が、病院での出来事と交互に語られていきますが、その意外性、凄まじさは想像を絶しているからです。

一人の男の過去と現在。そのどちらもが、確実に危うい方向へ進んでいくため、読者は二重のプレシャーに心休まる暇がありません。実際、かなりハードな内容だし、血みどろの場面も多々あります。

でも不思議と不快に感じないのは、どこか突き放したような、あっけらかんとした主人公ピーターの語り口にありそうです。しかも、随所に散りばめられた「*」(解説)を緩衝材のように使う手法など、とてもこれがデビュー作とは思えない上手さです。

早く読まないと損をする、ひょっとして今年一番(まだ9月ですが)のお薦め本になりそな1冊。とにかく、面白い!(画像はヘルメスの杖・・詳細は本書でどうぞ)

死神を葬れ (新潮文庫)

死神を葬れ (新潮文庫)

  • 作者: ジョシュ バゼル
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/07/28
  • メディア: 文庫



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迷惑なんだけど? [ミステリ小説]

フロリダはエヴァーグレーズ・シティに住むシングル・マザーのハニーは、愛するひとり息子との睦まじい夕食時を、無粋なセールス電話に邪魔される。その上、耐え難い侮蔑の言葉まで浴びせられた彼女は、セールスマンへの復讐を誓う。

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日本でもありますね、タイミングが最悪で、しかも100%不要のセールス電話。相手もお仕事、出なければいいじゃない、気にしなければいいじゃないと言われても、度重なれば嫌はいや。だから、ハニーの気持ちは分ります。セクハラと失業の直後となれば尚更のこと。

根強いファンがいるものの、どちらかといえばマイナーなカール・ハイアセンの小説の特徴は、登場人物のほとんどが奇人変人であり、その行動も予測不可能な点。勿論、本作にもおかしな人たちがゾロゾロ出てきます。

故意や偶然で、テン・サウザンド諸島のひとつ、無人島ディズマル”憂鬱な”キーに、彼らほぼ全員・・白人の霊に憑かれたインディアン、とんでる女子大生、不倫関係のセールスマンカップル、復讐者、盗撮の命を受けた探偵、ストーカーに救助者・・が集まってしまったから、さあ大変。

水も食べるものもない孤島で、ちょっとHで、かなりハチャメチャなハイアセン・ワールドが繰り広げられます。登場人物は変な人ばかりだけれど、最悪のヤツでさえなぜか憎みきれないのは、ある意味みんな一途で、それが少々度が過ぎているだけだから。だから、愛さずにいられません。

愛といえば、本作は勿論、彼のどの作品にも、作者がこよなく愛するロックバンドやヒット曲の数々が散りばめられており、ロックファンの方にはそれも楽しみのひとつかも。(画像は、フロリダとテン・サウザンド諸島)

迷惑なんだけど? (文春文庫)

迷惑なんだけど? (文春文庫)

  • 作者: カール ハイアセン
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/07/10
  • メディア: 文庫



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リンカーン弁護士 [ミステリ小説]

金にならない依頼人ばかり抱えている刑事弁護士ミッキー・ハラーは、リンカーンの後部座席を事務所代わりにロサンゼルス中を駆け回り、ひたすら足で稼ぐ日々。そんな時彼は、馴染みの保釈保証人から、とびきりの上顧客を紹介される。

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バーで知り合った女性を襲い、大けがを負わせた容疑で捕まった依頼人ルイス・ルーレイは、資産家の一人息子。本人が主張する無罪を勝ち取れば、多額の報酬が手に張るはずでしたが・・。

「ハリー・ボッシュ・シリーズ」マイクル・コナリーの新シリーズ第1作。主人公ハラーは、ボッシュら刑事とは敵対する立場にある刑事弁護士です。

そのため、正義や真実より、追求するのは”金”という彼の生き方に、最初はちょっと戸惑います。でも徐々に、自分なりの規範を持ち、台所が火の車でも只働きもしてしまう、人間臭いハラーに惹かれていきます。別れても彼を支え続ける二人の元妻との関係もいい感じ。

事態が急転し、畳み掛けるような展開の下巻に比べ、上巻は、登場人物や、何より刑事弁護士の仕事に関する説明が多いように思えて、つい興味が途切れがちになります。でもそこはマイクル・コナリー。無駄は何一つありませんのでお気をつけください。

なお、大好評を博した本作は映画化が決定しており、ハラーをマシュー・マコノヒーが演じるそうです。私なら、誰をキャスティングしようか・・。(画像は、リンカーン・タウンカーの後部座席)

リンカーン弁護士〈上〉 (講談社文庫)

リンカーン弁護士〈上〉 (講談社文庫)

  • 作者: マイクル コナリー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/06/12
  • メディア: 文庫



リンカーン弁護士〈下〉 (講談社文庫)

リンカーン弁護士〈下〉 (講談社文庫)

  • 作者: マイクル コナリー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/06/12
  • メディア: 文庫



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